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長崎地方裁判所 昭和32年(わ)13号 判決

被告人 津田啓二郎

主文

被告人を死刑に処する。

押収してある金槌一丁(証第二号)は、これを没収する。

押収してある現金二万二百三十七円(証第七号)、洗面器一個(証第三号)及びミルク罐二個(証第四号)は、被害者の相続人に還付する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、旧制中学校卒業後九州電気工事株式会社に勤務していたが、勤務状態がだんだん悪くなつて同社を退職し、一時は電気工事請負業を自営したこともあつたがうまく行かず、その後無為に過すうち、父の貯金を勝手にひき出して遊興費にあてたため、自宅にいることができなくなつて、伯父にあたる中田軍事方に寄食していた。

しかし、右中田方では小遣銭ももらえず金銭に窮するようになつたため、金銭調達の方法を思いめぐらすうち、被告人居宅の隣家に住む伊東シキエ(当時四十八年)が裕福で相当の貯えもある噂があり、しかも一人暮しで、その屋内の勝手も知つていることに思い至り、同女方から金銭を窃取しようと考え、若しその際同女から発見されたならばこれを殺害して強奪することも敢えて辞さないことを決意し、昭和三十一年十二月二十日午前三時頃金槌一丁(証第二号)及びねじ廻し一丁(証第一号)を携行して前記伊東方に至り、同女の寝室である二階八畳の間において金品を物色中、同女が眼を覚したので、やにわに同女に飛びかかり前記金槌の尖端で同女の頭部を二回強打して頭蓋骨骨折を与えた上、更に両手で首を絞めつけ、よつて同女をして頸部圧迫による窒息により間もなく同所で死亡させた上、同家から同女所有の現金三万一千数百円(証第七号を含む。)、洗面器一個(証第三号)、卵七個位及びミルク罐二個(証第四号)を強取したものである。

(以下略)

(裁判官 臼杵勉 関口文吉 諸江田鶴雄)

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